CoWorkingとは

※この記事は、2010年5月7日に作成されたものです。

キーワードは『場所』ではなく『人』。

●CoWorking(コワーキング)という働き方(=生き方)とは

個々に仕事を持ち働く人たちが、働く場所(空間)を同じくするだけではなく、コミュニケーションを図ることで、互いに情報と知恵を共有するという概念およびそのための施設を言います。「コミュニケーション・ワークスペース」とも呼ばれています。

ですので通常、そのコミュニケーションを図りやすくする目的で、ワークスペースはパーテーションなどで区切らずオープンスペースにしています。図書館に似ていると言えばイメージがわくでしょうか。

また、毎日利用する会員以外は席を特定せず、空いている場所を利用するフリーエントリ制なのが通例です。その方が違ったメンバーと交流できるのでCoWorking本来の目的に適います。

よくあるのはこんな感じですね。

オフィスのような賃貸借契約ではなく、あくまでそのCoWorkingの会員として利用するので、会員は自分の利用日や時間帯、日数などに応じて利用コースを選択でき、そのコースに応じた利用料金を支払います。ですから、保証金も賃料もありません。なお、毎日利用する場合でも、契約期間は通常1ヶ月単位です。

もうお判りのように、CoWorkingが通常のレンタルオフィスと決定的に違うのは、利用者が享受するサービスが単に『場所』だけではなくて、そこに集まる『人』によってもたらされる情報や知見やノウハウであったりします。

そして、(特にフリーランスのウェブワーカーにとっては最も不可欠な)、「仕事を通じて共感しあえる仲間」に出会えるチャンスもあれば、その仲間があればこそ実現できるビジネスチャンスだったりもします。

●背景

ここへ来て、日本でもCoWorkingという働き方(=生き方)が可能性を帯びてきたのは下記のような背景があります。

・様々な理由で企業から独立し、フリーランスもしくは少人数で働く人が増えている
・ノマドワーキングにより自宅とクライアント先との間の第三の場所(カフェなど)で仕事をする人が増えている
・一方でホームオフィスの限界を感じているビジネスマンも多く存在する
・と同時に、事務所に要する家賃や光熱費などの固定経費は可能な限り削減したいと考えている
・自分の属する企業の枠を超えた情報共有の場が求められている
・インターネットの活用による協業環境が整ってきている

数え上げればまだまだいくつも出てくると思いますが、いずれにせよ、企業に属することなく自分の裁量で仕事をこなすという働き方を選ぶ労働人口は、今後ますます増える予感がします。

●CoWorkingの利点

その背景の裏返しですが、CoWorkingで働く利点としては

・同業者のみならず異業種の人とも交わることで仕事に役立つ新しい発想を得ることができる
・独りではこなせないプロジェクトを遂行するために協業パートナーとコラボレーションを組める
・ホームオフィスにおける孤独感・疎外感から解放される
・単独でオフィスを賃貸するより経済的にワークスペースを確保できる
・打ち合わせや勉強会・セミナーのためのスペースを利用できる

などが挙げられると思います。

意外に思われるかもしれませんが、孤独感・疎外感からの解放は結構重要な用件です。自宅だから気楽でイイだろうと思われがちですが、いざ一人で仕事してみると、時として取り残され感に苛まれ、業界のトレンドや自分の立ち位置が見えなくなることへの不安が募ってきます。それを解決するのは、他でもない共感できる仲間との交流ですね。

なお、CoWorkingの利用者は、ウェブデザイナーやプログラマー、エンジニア、ウェブマーケッターなどウェブ系のワーカーが多いのは事実ですが、しかし必ずしもその限りではありません。CoWorkingの理念に共鳴し、仲間を作り交流することに意義を認めるワーカーならどんな職種の人でも利用できます。

要するに、CoWorkingのキーワードは『場所』ではなく『人』ということですね。

●参考

ところで、CoWorkingを研究するために資料を探したところ、”I’M OUTTA HERE! – How coworking is making the office obsolete”という本を見つけました。「こんなところから出てやったぜ!~CoWorkngはいかにしてこれまでのオフィスを時代遅れにしたか」とでも訳せばイイのでしょうか。薄くて文字の大きい本ですが、CoWorkingの理念や歴史、事例等々が簡潔に掲載されています。もし、あなたがご自分の地域でもCoWorkingをやりたいとお考えなら一読をお勧めします。

0982306709 I’m Outta Here: How Co-Working Is Making the Office Obsolete
2009-10-27
by G-Tools

この本によると、そのルーツとして20世紀初頭のパリの芸術家集団La Ruche(ラ・リューシュ)や、1978年にニューヨークで設立された文筆家のための組織The Writers Room(ライターズルーム)などが紹介されていますが、CoWorkngという言葉で表現されるようになってきたのは、サンフランシスコに設立されたHatFactory(なぜかサイトはダウンしていてTwitterもストップしていますが)あたりでしょうか。多分ですが、2004~2005年頃かと。

その後、そこの初期メンバーだったTara Hunt氏とChris Massina氏らが2006年にCitizenSpaceを開設しますが、ここはそれ以降のCoWorkingのお手本と言ってもイイと思います。

ちなみに、そのTara Hunt氏は邦訳『ツイッターノミクス』の現著者で(原題は”The Whuffie Factor”)、もともとウェブマーケッターですが、ソーシャルウェブの活用に関しては相当な使い手であり、その教授するところはCoWorkerにとっては得るところ大です。

4163724001 ツイッターノミクス TwitterNomics
村井 章子
文藝春秋 2010-03-11
by G-Tools

また、海外の事例で参考になりそうなところを他にいくつか挙げておきます。

New Work City(NY)

Office Nomads(Seattle)

IndependentsHall

TheHiveCooperative

ちなみに、今時点で世界中に400カ所以上、CoWorkingが存在するようです。

なお、上記以外の事例の他、CoWorkingについては下記のサイトでものすごい量の情報が網羅されていますので、是非チェックください。

CoWorking

About the Author

avatar カフーツ主宰の伊藤です。日本にコワーキングが根付くことを目指しています。